マツケンの記録部屋

教育に関して。

『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』

インクルーシブ教育や特別支援教育にも通ずる点がたくさんあった。

「違い」や「多様性」を大事に。

かつそれらを「力」に変える学び方や教え方を教えてくれる。そして、一人ひとりをいかす教室とは何かを考えることのできる一冊。

 

ようこそ,一人ひとりをいかす教室へ: 「違い」を力に変える学び方・教え方

ようこそ,一人ひとりをいかす教室へ: 「違い」を力に変える学び方・教え方

 

生徒のレディネス(本著 注1 「特定の知識や理解やスキルに関して生徒が学習し始める時点の状態」)、興味関心、学習履歴といった、生徒一人ひとりの「違い」や「多様性」をもとに、学習する内容、方法、成果物を変えていくことを基盤とし、個別の学習のモデルを示してくれている。  

 

P52から引用

生徒は、もっている体験、レディネス、興味関心、能力、言葉(読み・書き、聞く・話す)、文化、性差、学び方などで異なる。ある小学校の教師が次のように指摘した。「生徒は、私たちのところにそれぞれ異なる特徴をもって来ます。それに応えて私たちの教え方を、一人ひとりをいかす教え方にすることは筋が通っています。」

 

日本の特別支援教育の専門性は高く(と、僕は思っている)、発達段階に応じて個別の指導計画を作成、個々のニーズに合わせた指導を考えている。

しかしそれが特別支援教育の枠から出た途端(笑)、つまりいわゆる普通学級では、学びの内容もペースも順序も、そして学び方さえも「同じ」であることを強要される。これはユニバーサルデザインな教育においてもそう。一斉授業の型から脱することはできないでいる(ことが多い)ため、一斉授業の型の中で、視覚的な障がいとなりうる教室前方の掲示物は外しましょう、といった「スキル」が多くなっている。 

インクルーシブ教育について思い出されたい。元来は通常学級の中で、特別支援教育は実現可能だとされていた。(「サラマンカ宣言」「子どもの権利条約」)となると、特別支援教育での個々のニーズに応じた教育は、通常学級の中でも、すべての子どもにも、提供しなければならないのでは…?

 

話を戻すと、こうした「同じ」より「違い」や「多様性」を大事にすること。それが「一人ひとりをいかす教室」づくりの根っこだと感じた。

 

本著では、以降、一人ひとりをいかす教室をつくるための明確に定式化された方法はないために、大事にされたいこと(四つの哲学といくつかの原則、いくつかの軸となる教え方)や、一人ひとりをいかす教育を支援する学習環境、カリキュラム、教師の役割、一人ひとりをいかす多様な教え方(コーナー、課題リスト、複合的プロジェクト、周回、センター、多様な入り口、段階的活動、契約、三つの能力など)を示してくれている。特に一人ひとりをいかす多様な教え方は、実践で役立てていきたいものばかり。

 

来週は「個性」についての本質観取に取り組む。「違い」を大事に、一週間考えてみたい。